株式会社大検は、非破壊検査の一種である「漏れ試験」の中でも特に高感度に漏れを検出することができる「ヘリウムリークテスト」において多くの実績を有します。
当ページでは、ヘリウムリークテストを必要とする企業のご担当者様向けに、弊社の実務経験豊富な社員が、ヘリウムリークテストのメリットや試験方法などについて分かりやすく解説いたします。
解説者
株式会社大検 品質保証室 室長
岡 英輝
〈ヘリウムリークテスト関連資格〉
- 漏れ試験レベル2(LT2)
〈その他の非破壊検査資格〉
- 放射線透過試験レベル3(RT3)
- 浸透探傷試験レベル3(PT3)
- 超音波探傷試験レベル2(UT2)
- 磁気探傷試験レベル2(MT2)
- 渦電流探傷試験レベル2(ET2)
ヘリウムリークテストとは
「ヘリウムリークテスト」は気密性が求められる製品、設備、配管などを対象とする「リークテスト(漏れ試験)」の一種です。
安全性や機能性を確保する上で密閉状態や真空状態(気体漏れがない状態)であるべきモノは世の中にたくさんあり、身近な家電や自動車、食品、医薬品から電子機器、科学プラント、原子力、航空、宇宙関連機器に至るまで幅広い産業分野でリークテストが必要とされています。
試験品の内外に「圧力差」を生じさせて漏れを判定
リークテストには様々な方法がありますが、
加圧または減圧によって、試験品の内と外に圧力差を生じさせ、圧力差のある箇所から漏れ出す気体(内→外 または 外→内)を検出する
という方法が基本となります。
要は「気体は気圧の高いところから低いところへ移動する」という原理を応用した試験で、気体の移動があれば漏れ有、気体の移動がなければ漏れ無と判定することができます。
試験方法によっては漏れ箇所の特定や、漏れ量の測定も可能です。
(その他、液体漏れ、発泡漏れなど視覚的に漏れを調べる方法もあります)
ヘリウムリークテストは、最も高感度かつ高精度な漏れ試験方法
ヘリウムリークテストは、トレーサーガス(検査用ガス)としてヘリウムガス(He)を用いるリークテストです。
気体漏れ試験の中で最も高感度かつ高精度に漏れを検出できる試験方法となっており、許容リーク量(漏れ量)が特に厳しい※精密機器や原子力関連機器のリークテストにも用いられています。
10-7(Pa・m3/s)〜10-11(Pa・m3/s)程度
ヘリウムガスを用いる様々なメリット
トレーサーガスにヘリウムガスを用いる一番のメリットは、他のガスに比べて質量や分子直径が小さく、ナノレベルの極微小な隙間に入りやすいということです。溶接部やシール部からの漏れだけでなく、表面部の目に見えない微細な傷や孔からの漏れも検出することができます。
ちなみに質量数で言えば水素が一番小さくヘリウムは2番目ですが、分子直径は水素よりもヘリウムの方が小さいため、ヘリウムが漏れないならば水素も漏れないと仮定できます。
その他、識別性が良い、安全性が高いなど様々なメリットがあります。
Heの性質 | メリット |
分子直径が小さい | ナノレベルの極微小な隙間に侵入しやすい |
質量数4のイオンとなる | 質量分析において空気中の他のガスとの識別が容易 |
空気中の含有量が微量(約5ppm) | バックグラウンドが小さく補正しやすい |
吸着エネルギーが小さい | 侵入が速く、また排気もしやすい |
不活性 (他の元素と化学的に反応しない) | 試験品を変質させない 発火や爆発の危険性がない |
毒性がない | 吸い込んでも安全 大量に吸い込むと酸欠になるが、空気より軽い(約1/7)ため拡散性がよく吸い込みにくい |
非フロン系 | 環境負荷がない |
ヘリウムガスを検知する「ヘリウムリークディテクタ」
ヘリウムリークテストを行うには、ヘリウムガスを検知する「ヘリウムリークディテクタ」という検査機器が必要になります。「ヘリウムリークディテクタ」の分析管がヘリウムその他のガスをイオン化して識別し、ヘリウムが漏れていれば瞬時に感知し、リーク量(漏れ量)を表示します。リーク量は国際単位系(SI)で定められている「Pa・m3/s」で定量的に把握することができます。
ヘリウムリークテストの主な試験方法
ヘリウムリークテストの方法は、大きく分けて「真空法」と「加圧法」の2種があります。
「真空法」では試験品の内部を真空に排気(減圧)し、内部に侵入したヘリウムガスをヘリウムリークディテクタで検出します。
「加圧法」では試験品の内部にヘリウムを封入(加圧)し、外部に漏れ出したヘリウムガスをヘリウムリークディテクタで検出します。
以下に「真空法」と「加圧法」の主な試験方法を説明します。
図は、試験品に接続する各種装置を省略した簡略図になります
真空法:真空吹付法(スプレー法)
真空ポンプを用いて試験品内部を真空排気した後、吹付プローブを用いて外側からヘリウムガスを吹き付け、試験品内部へ侵入したヘリウムガスを検出します。
漏れ箇所の特定ができますが、全体リークの定量化は難しいです。
真空法:真空フード法(外覆法)
真空ポンプを用いて試験品内部を真空排気した後、試験対象をまるごとフード(ビニール袋など)で覆い、フード内をヘリウムで満たし、試験品内部に侵入したヘリウムガスを検出します。
全体リークの定量化ができますが、漏れ箇所の特定は難しいです。
弊社では、お客様からのご依頼事項として「漏れ箇所の特定」が必要ない場合も、まず「真空吹付法」で漏れ箇所がないかをざっと試験し、最終的に「真空フード法」で漏れ量を測定しています。
加圧法:スニッファー法(吸込法)
試験品の内部をヘリウムガスで加圧し、外側からスニッファープローブで常時吸引しながら漏れ箇所を検出します。ヘリウムガスは拡散しやすいため、試験品の下の方から吸引していき、反応した箇所をチェックしておいて、全体を吸引した後にチェック箇所を再度吸引して判定します。
漏れ箇所の特定ができますが、全体リークの定量化は難しいです。
加圧法:加圧積分法
試験対象箇所をまるごとフードで覆い、試験品の内部をヘリウムガスで加圧し、フード内に漏れ出るヘリウムガスを一定時間溜め込み濃度を上げます。フード内の気体をスニッファープローブで吸引して全体リーク量を測定します。
全体リークの定量化が比較的容易にできますが、漏れ箇所の特定は難しいです。
以上が代表的な試験方法となります。その他、加圧した試験品を真空チャンバーに入れてリーク量を測定する「真空ベルジャー法」や、小型の密閉品(開口部がない品)に適用可能な「ボンビング法」などいくつかの方法があります。
どの試験方法を適用するかについては、大抵の場合、仕様書にて指定されていますが、試験方法が規格で定められていない品などでご相談を受けた際には弊社にて最適な試験方法を検討し、ご提案させていただきます。
ヘリウムリークテスト実施例
ヘリウムリークテスト試験実績
大検にてここ数年に実施したヘリウムリークテストの事例をご紹介します。
(2020年〜2024年11月現在)
加圧法 | |||
実績件数 | 試験方法 | 対象品 | 内容 |
実績4件 | スニッファー法 | 鋳鋼バルブ | バルブ本体内を規定圧までHeガスで加圧し、一定時間Heガスを封入後、検知プローブでバルブの漏れ箇所を特定する。 |
実績16件 | スニッファー法 | 冷凍機 | 冷凍機の真空不良箇所を探す目的で、冷凍機内を規定圧までHeガスで加圧し、検知プローブで真空不良原因となる漏れ箇所を特定する。 |
実績34件 | スニッファー法 | 熱交機器 | 熱交機器のシェル側又はチューブ側を混合ガス(He+窒素)で規定圧まで加圧し、一定時間経過後に管板面の溶接部及び管内を検知プローブで漏れ箇所を特定する、又は漏れ量を測定する。 |
実績1件 | スニッファー法 | チャッキ弁 | チャッキ弁の出口側をHeガスで規定圧まで加圧後、入口側に検知プローブを差し込み、漏れ量を測定する。 |
実績1件 | スニッファー法 | 埋設配管 | 地上から1~2mに埋設されている配管を規定圧までHeガスで加圧し、地面に掘った穴(深さ約30cm)から検知プローブを挿入し、漏れ箇所を特定する。 |
実績2件 | 加圧積分法 | 容器 | 容器本体溶接部やノズル溶接部をポリシートで覆い、容器を規定圧までHeガスで加圧後、ポリシート内に検知プローブを差し込み、漏れの有無及び漏れ量を測定する。 |
真空法 | |||
実績件数 | 試験方法 | 対象品 | 内容 |
実績22件 | 真空フード法 | 真空容器、真空タンク、真空用継手 等 | 試験体内を真空ポンプで真空引きし、溶接部及び継手箇所等をポリシート等で覆い、そのポリシート内にHeガスを封入して漏れ量を測定する。 |
実績6件 | 真空吹付け法 | 真空タンク、真空チャンバ、ヒーター 等 | 試験体内を真空ポンプで真空引きし、溶接部及び継手箇所等に直接Heガスを吹き付けて、漏れの有無及び漏れ量を測定する。 |
大検の強み
出張検査、持ち込み検査に対応しています
ヘリウムリークテストが求められるのは主に次の2パターンです。
- 工業製品を出荷する前に行う品質検査
- プラントや工場等の既設設備に対する保守検査または増築時の品質検査
大検では、現地検査(全国出張対応)はもちろんのこと、本社社屋内にヘリウムリークテスト専用施設を設え、持ち込み検査にも対応しております。
また、「稼働中の配管のどこかから漏れているようだ」といった場合も、できる限り迅速に対応いたしますのでご相談ください。
有資格者をはじめ、経験豊富な検査員が在籍しています
ヘリウムリークテストは非常に微細な漏れを検出するがゆえに注意するべき点が多々あり、準備段階から慎重さを要します。正確な結果を得るためには、自社設備や治具の事前チェックを念入りに行い、試験品の材質や構造も把握しておく必要があります。
試験品に検査機器を接続する際にはまず継手から漏れていないかを試験しなければなりません。またヘリウムガスは軽く拡散しやすいため、試験中は拡散を考慮して誤反応を見極める必要がありますが、見極めるためには試験方法によって起こりやすい誤反応を予め知っておくことが重要になります。
いかに高性能な検査機器を用いても、検査員の経験値が少なければ正確な結果を得ることは困難です。
大検には実務経験豊富な検査員が在籍しており、NDTの漏れ試験(Leak Test)資格保有者指定の案件にも対応可能です。
どうぞご安心してお任せください。